どこから行っても遠い町

川上弘美さんは、「センセイの鞄」「ニシノユキヒコの冒険」「溺レル」に続いて4作目です。

都内から私鉄でも地下鉄でも20分くらいの町、ということで今住んでいる町に似ているのかなあと思いながら読みました。

 

魚屋さん、塾講師の先生、居酒屋の板前さんとお運びさん。競馬新聞を片手にするおじさんとか、「うちの町にもこういう人いる!!」って妙な親近感がありました。

 

吉祥寺にも渋谷にも新宿にもない、

新しいビルと古い駄菓子屋が混じる不思議な東京の街で、私は何を求めているんだろう...? とたまに疑問に思います。

 

そこそこ気に入っている部屋と町の風景を眺め、この町には実はじんわりと多くの秘密や時代を抱えているのではないか、と思いつきました。

ある人にとっては新天地であり、またある人にとっては日曜の午後を過ごした日々があり、ある人にとっては昔からじっと生活している場所なのではないか。

 

 小説ではそれが離婚や葬式、引っ越しと相変わらずつかみとれない寂しさを込めて描かれています。だけど同時に温かさを感じるのも川上弘美さんの作品ならではだと思うのです。

 

最近はダニロキシュ、マルグリット・ユルスナールといった人々に挑戦しながらテストや就活について考えていたので、川上弘美さんを読んでちょっと安心をしました。