レット・バトラーが好きではない
「風と共に去りぬ」5巻を繰り返し気に入った場面を読んでいて、
「メラニー…絶対バトラーとの子どもを産もうとしてたでしょ…」って胸が痛くなる。
スカーレットの振る舞いは確かに見ていて恥ずかしくもなるけれど、現実には私はスカーレットのように無知で粗暴なふるまいをするわけだから、彼女のことを憎むことができない。
結果「メラニーみたいな人にならなければ」(必死)と思うことになる。
アシュリ・ウィルクスは論外として、(なんというのかしら、登場した時から頼りない気がしてしまっていて…)
レット・バトラーはぱっと見、イケメンなのである。
そもそも顔がイケメンだし、社交家だし、情熱的なプロポーズもするし、お金持ちだし、イクメンだし、要素としては抜群なのである。
要素としてイケメンなのだけど、その実、ものすごく頼りない時がある。
いくつかの場面はあるけれど、
すごく些細な場面で、娘のボニーがブルーベルベットを乗馬服にすると言い出した時が頼りないのだ。
それがいかに乗馬に向いていないのか、娘に言ってほしい、
というスカーレットの母として・妻としての頼みを聞かずに
「汚れたらまた新しいのを買えばいい」として乗馬服について青を着せる場面。
もはや怒りすら感じる。
もちろん娘ちゃんボニーに関しては「言うことを聞いてもらってラッキー」という感じだし、どうしてそうしてはいけないのか? がわからないままわがままを聞いてもらってしまう。
(うぅ…覚えがあって空恐ろしい)
けれど母・妻たる助言を聞き入れないバトラーってやっぱりどうかしてると思う。
そして挙句、「あなたが殺したその子を渡しなさい」と言われて泣いたりしている。
スカーレットのことを「母親として不適格」と言いながら、母親としての役割を果たさせなかったのはバトラーだし、母や妻としてではなく女としての役割を永遠に果たせと言っているようなものだ。
ここでの女としての役割としては、自分がヒーローに見えるようにしておくこと。
常に自分がヒーローであり、あなたは庇護されるべきなのだという関係を続けていくこと。
だからスカーレットはむしろよくバトラーを愛していた方だと思う。
自分の子どもを失っても気丈で、死んだことを受け止め、次に自分が何をするべきかを知っている。
「いま、スカーレットさまは神さまに賜ったものは耐えられると申しました。これまでにもいろんな労苦に耐えられてきたお方ですから。でもレットさまは――。メリーさま、あの方はご自分の意に染まないことは我慢したことがないんです。なにひとつ。それがあの方なんです。それでご相談にきたんです」
私個人はどちらかというと、「自分の意に染まないことは我慢したことがない」人間だから、この一点のみにおいてバトラーを責めることはできない。
けれど誰かを庇護すべきと思いたくもないし、無駄なヒーロー願望はなるべく持たないようにしたいと思う。
レット・バトラーが好きではないのは、おそらく、
私自身が彼のような気質を自分の中に認めているからだと思われる。