新しい自分になりたいなら北へ

引っ越しの準備をしながら合間に『呪術廻戦』のあらすじを眺めていた。

 

その中に

「新しい自分になりたいなら北へ 昔の自分に戻りたいなら南へ行きなさい」

という言葉があった。

 

なんの啓示?

 

北海道に旅行に行く人が最近多い、ということは書いたけど、移住は沖縄が多かった。

ほら、前の病院の先生も沖縄に行っちゃったし。

インドネシア音楽を聴いて「インドネシアに行きたい〜」とかも思ったりした。

 

しかし私は北へ行くのだ。

 

引っ越しの日は雨が降った。

雨の中物を運んでもらい、退去の時間まで床を拭いた。

退去費用が結構かかって落ち込んだ。

引っ越しをしようとしてみると寂しいものがある、というか自分の一部がなくなってしまったように感じた。

 

上京した時も、寮を離れた時も、一人暮らしの家を去った時も、山梨に行った時も、また一人暮らしに戻って東京に行った時も、この寂しさを感じた。

 

ホテルの近くのコンビニでカップラーメンを買って泣きながら「美味しい」と言って食べた。

 

翌日、なぜか持っていたロクシタンのシャンプーとリンスで髪を洗い、入浴した。

朝食にはホテルが用意してくれた小さなパンを食べた。

ホテルを出て駅に向かった。

 

3月のことを思い出していた。

同じような場所に来ているのだが、まさか自分が北海道に行くとはーーこの時はつゆほども思っていなかったのではないか。

 

白くて高いマンションが青空に映えていて、「いつかこういうところに住んでみたい」と思った。

 

羽田行きの電車に揺られて、空港に着き、先に荷物を預けてから搭乗手続きをした。

チェックインはオンラインで済ませていたが、そういえば搭乗券を発行していなかった。

普段格安航空しか使っていないからである。

 

ラウンジにたどり着くと、窓から飛び立つ飛行機が見えた。

東京湾も見えた。

 

羽田空港を発つ時、「さよなら 東京」と心の中で呟いた。