虹の架け橋

お世話になった先生(医者)が退職するので、最後の診察に行ってきた。

2020年の5月から2022年の3月まで、およそ2年弱お世話になったことになる。

回復後の経過は良い、ということだった。

恋人と別れた、とか、仕事を休んでしまう、というような、プライベートなことも社会的なことも話していたし、何より具合が悪くなってから良くなるまでを診てくれていたので寂しい。

けれども、こういうタイミングで良かった気もする。

割と話を聞いてくれたお医者さんだったので、このまま診てもらい続けていたら、「もうこの先生なしにはいられない」と思うほどになっていたのではないか。

私は最後、「ありがとうございました」と言うことはできなかった。

でも、先生と目を合わせた時に、何も言わなくても伝わる気がした。

(そう思うのはエゴかもしれない。)

 

春のうららかな陽光の日に、笑顔で別れを告げるのが理想だったが、その日はあいにく雨の日だった。

 

私は、生きている間にどれだけのお別れをしなくてはならないのだろう。

小学校の卒業式は絶望していた。中学の卒業式は悲しかった。高校の卒業式は喜びでいっぱいで、大学の卒業式はいつの間にか終わっていた。

社会人1年目に引っ越しを多くして、東京に戻ってきたと思ったら病気をして、実家に戻ってまた東京に帰ってきた。なんとなく1年過ごしているうちに同期が2人も退職して、春には私が異動になる。

 

大学の時の友達(寮生)が、「お前の人生は大変なことばっかりだな」と言った。

小学6年生の時の絶望感については「大した絶望ではないな」とこともなげに言った。

 

それはともかく。


お世話になった先生が退職して、引っ越しをして別の場所でまた診療をする。

先生は「仕事で行くんだからね」と

にこりと笑っていた。

 

先生、命を助けてくれてありがとう。

新しい場所でも頑張って。