熊本へ行ってきた。(下)

熊本の、「橙書店」というところで友達と会った。

橙書店は品数が少ないものの、流行りや王道は外さず置いてあって、比較してみると東京の書店はいかに本を売るのに必死だなあ、と感じた。

カフェコーナーも併設されており、そこで友達はチキンカレーを頼み、私はジンジャーエールを頼んだ。

それらが来る前に、近況を話していたら友達が後ろを振り向き、ゆったりした服装の女性に話しかけた。会社の上司だという。

そこで二人で会社の話をしていた。


その話がどうも、別の友人の会社の仕事にも重なることのようで、あとでそのことを話したらとてもびっくりしていた。

「私、そこの会社の社長さんとメールでやりとりしていたのよ!」


あれこれと話して、「この後どうするの?」と訊かれ、「どうしようかと思っている」と言うと、「うちに来る?」とお宅へ誘われた。


そこで友人の車で八代市というところへ行くことになった。


4ヶ月になる赤ちゃんと、旦那さんにお会いした。挨拶もそこそこに、あの子は何をしている、とか妹は何をしているか、というような話になった。


友達は、今の仕事を二、三年したら辞めるつもりだというようなことを言った。

辞めてどうするのと聞くと、国連に関わりたい、と言う。

同じ大学の同期で、やっぱり国連に関わりたいと思っているらしい人の話がちらっと出た。


私はちょっとびっくりしてしまった。

旦那さんもいて、子どもも産まれて、自分の帰る場所(仕事)もあって、とてもとても幸せだと思うのに、それ以上に海外で働きたいのか、と思ったのだ。

しかもこの子は、私から見たら十分いい会社に入っているのだ。そして育休ももらっているのだ。


私は(実は)記者になりたいと思っていた時代があったので、国連という高学歴社会の壁にクラクラした。(注:国連は学歴がないとなれないが、学歴があるからと言ってなれるわけでもない)。


ぽつぽつと話をして、4人で公園に行こうという話になり、赤ちゃんをベビーカーに乗せて、徒歩3分くらいの社台のある公園に行った。


歩いて夕日が差す頃、私は、山梨にいる彼が幸せだといいなと願った。


空港まで旦那さんが運転してくれ、助手席にいる友達と後部座席にいる赤ちゃんに別れを告げた。


私の熊本旅行は、ある家族を訪ねる旅だったのだ。